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その名前を聞いた直後、一人だけ思い浮かぶ人物がいた。
高校の同じクラスに一人、すごくかっこよくて女子生徒からの人気もすごかったにも関わらず、とてつもなく無愛想で無口な男の子がいた。
女子生徒からのアプローチに一切見向きもせず、つまらなさそうに高校生活を過ごしていた印象がある。
彼のことをお金持ちの息子だとは聞いていたが、東雲という名前を聞いても当時はピンと来なかったが今はっきりした。
高校の時にいたあの無口で無愛想な東雲くんが、今目の前にいるこの整った顔立ちのイケメンであるということが。
そしてあの"東雲ホールディングス"の息子だということを。
相変わらず無愛想な印象は変わりないが、明らかに私に向ける視線が甘みを帯びていてくすぐったい。
東雲くんのことを思い出した途端、すごく親近感が湧いてくる。
「え、あの無口で無愛想な東雲くん?!」
「そんなふうに思ってたんだ」
「あ、いや…違うの、ごめん」
東雲くんは注文していたブラックコーヒーを片手に自然と私の向かい側の席にそっと座る。
元々学生の時からかっこよかったけど、ますますそのかっこよさに磨きがかかっておりカフェ内にいる女性陣の視線を一身に受けていた。
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