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立ち上がった私たちは冬麻を見送るために一緒に玄関まで向かった。
キャリーケースを持って最後に深々と伊織くんに向かって頭を下げる。
「伊織さん。また来てもいいですか?」
「もちろんだ。冬麻くんは俺の義弟だからな、いつでも待ってる」
「なんかお兄ちゃんができたみたいで嬉しいです。じゃあ姉ちゃんをお願いしますね」
「任せておけ」
「伊織くん。下まで見送ってくるね」
気をつけて、と言って私と冬麻を見送る伊織くん。
家を出た私たちはとぼとぼとゆっくり足並みを揃えてマンションの下まで向かう。
お互い黙り込んだままで私自身も何か話したいが、何から話せばいいのか悩んでしまう。
そんな沈黙を破ったのは冬麻だった。
「俺、すごく安心したよ。姉ちゃんがちゃんと自分の幸せ見つけてくれてて」
「えっ⋯?」
「ほら、ずっと姉ちゃん俺のことばっか考えてて自分のこと後回しにしてただろ?だから俺それが気になってて⋯俺の存在が姉ちゃんの幸せの足枷にはなりたくなかったから、本当に良かった」
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