結婚のご挨拶

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洗練された空気をまとった2人を前に私は完全にひよってしまい、うまく言葉が出ない。 見かねた伊織くんが咄嗟に助け舟を出してくれる。 「彼女が心春だよ」 「は、はじめまして。心春です。あの、このたびは、結婚のご挨拶も行かず伊織さんと結婚してしまい、本当に申し───」 「あなたが心春ちゃん?」 私の言葉を遮ったのは伊織くんのお母さんで、ほんのり微笑むその表情の裏にどんな感情を隠しているのか読み取れない。 ゆっくりと近づいて距離感を詰められるが、思わず後ずさってしまう。 怒られるかと思った瞬間、私の身体はいい匂いに包まれた。 何が起こったのか分からず硬直しているとため息をついて呆れ顔をした伊織くんが視界に入り、それによって冷静になれた私は伊織くんのお母さんに抱きしめられていることに気づく。 「えっ??」 「あなたが心春ちゃん?きゃ〜可愛い!なんて可愛い奥さんなの!目もくりっくりで髪もサラサラで可愛らしい子ね!」 「あ、あの⋯」 「私すごくあなたに会いたかったのよ〜!会えてよかったわ」 「母さん⋯心春が困ってるから」
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