結婚のご挨拶

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伊織くんの静止も聞かず伊織くんのお母さんは私のほっぺに思いきり頬ずりをする。 想像とは違うリアクションに呆気に取られ、抱きしめられたまま硬直する私を見て痺れを切らした伊織くんは、私の腕を取って自分に引き寄せた。 「母さん、落ち着いて」 「何よ〜伊織だけずるい!そんな可愛い心春ちゃんを独り占めなんて許さないわよ、ね!侑李くん」 「そ、その呼び方はだめだって言ったでしょ桜ちゃん。一応彼女はうちの社員だぞ、社長の威厳がなくなっちゃうだろ」 「侑李くんだってここに来るまでは心春ちゃんに会うの楽しみにしてたじゃない!急に社長風吹かせちゃってやだわ〜」 「さ、桜ちゃん!仕方ないでしょ、社長なんだから。威厳がないと幻滅されちゃうだろう」 (何この可愛い会話は⋯⋯伊織くんの両親はお互いをそんなふうに呼ぶんだ) 想像とは全く違うおふたりのキャラクターに、さっきまでの緊張はどこかへ吹っ飛んでいった。 怖い人たちなのかと思っていたがそれは全くの見当違いなようで、思ったよりもかなり可愛らしい2人のようだ。 「ごめんな心春⋯こんな両親で」 「ううん、なんかその⋯すごく可愛らしい2人だね」 私の腕を取り耳元で小声で話す間も伊織くんの両親は2人で小さな言い合いをしていた。 正直もっと怖そうな両親なのかと思っていたが、あまりにも拍子抜けしてしまう。
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