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「ねえ心春ちゃんのご家族はどんな方たちなの?」
「あ⋯それは⋯⋯」
結婚相手の家族のことが気になるのは当たり前のことだ。
ずっと黙っている訳にはいかないし、例え契約結婚だろうがそれはおふたりには関係ないことで、単純な質問なのだろう。
それにこの一瞬会っただけでも2人の人柄が痛いほど伝わってきてなるべく事実を話したいと思った。
契約結婚のことだけは言えないけど、それ以外の部分はなるべく嘘偽りなく話したい。
「家族は弟しかいません。両親は離婚してます。母はいますが絶縁状態で父は再婚し新しい家族と暮らしています」
「⋯⋯そう。話しづらいこと聞いちゃって、ごめんなさいね」
「いえ⋯その、私じゃ正直不釣り合いだとは分かってます。私みたいな人間、伊織さんには相応しくない。すみません⋯」
契約結婚の妻だというのに何を一丁前に傷ついているのだろうか。
そんな資格なんてないというのに、夫婦や家族っぽいことを繰り返すたびにどんどんおこがましさが増していく。
そんな肩身の狭い思いをしているとコーヒーを入れ終えた伊織くんが戻ってきた。
人数分のカップをテーブルに置き、私の隣に静かに座る。
「心春を困らせないでって言ったよな母さん」
「違うよ伊織くん、お義母さんのせいじゃないから」
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