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キッチンまで私たちの話が聞こえていたのか伊織くんが少し怒ったように語尾を強めた。
それを静止するように止める。
「心春ちゃん。俺たちは別に2人の結婚をどうにか言いに来たわけじゃない。伊織が選んだ相手だし、俺たちは文句を言うつもりはないさ」
「そうよ心春ちゃん。私たち純粋に嬉しいのよ。私たちには息子しかいないから娘ができたと思って少しはしゃいじゃったみたいだわ」
2人の優しさが心に染みりとてつもない罪悪感に蝕まれた。
こんなにもよくしてくれる両親に私たちは絶対に言えない秘密を隠していることが申し訳なく感じる。
この契約結婚がいつかふたりを傷つけてしまわないかすごく不安だ。
私が背負う嘘はこうして私だけの家族じゃなくて伊織くんの家族まで巻き込んでいくんだと実感した。
「楽しい話をしましょ!私夢だったのよね〜娘と恋バナしたり一緒にスイーツ食べたりするのが。これからそういうの一緒にやりましょうね心春ちゃん。侑李くんも娘ができたらいっぱいいろんなものプレゼントしてあげたいって言ってたのよ」
「さ、桜ちゃん!そういうの言っちゃだめだってば」
2人の会話を聞いてると私まですごく幸せな気持ちになった。
私自身あまり家族というものをよく知らないし、家族団欒をした記憶もほとんどないためこういう温かい家族の関係に触れると羨ましさも感じる。
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