結婚のご挨拶

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私と話すときのお義父さんはやっぱり想像通りのしっかりとした印象で社長のイメージそのものだ。 しかしお義母さんと話す時は振り回されているような素が出る所もほんわかして親しみやすい。 「私、社長はもっと怖い方なのかと思ってました。でも全然違うんですね」 「他の社員には言わないでくれよ。桜ちゃんには俺も伊織も振り回されっぱなしなんだ」 そう言いながらお義母さんを見つめるお義父さんの瞳はとても優しくて愛してるんだろうなということがすごく伝わってきた。 本当の夫婦ってこういう人たちを言うんだろう。 「でもさっき桜ちゃんが言ってたことは本当だよ。娘ができたみたいでとても嬉しい。本当の家族のように俺たちを頼ってくれていいんだからな」 「⋯ありがとうございます」 「桜ちゃんも心春ちゃんが奥さんになってくれたこと、本当に喜んでたんだ。伊織は仲良い相手にはいいけど、そうじゃないと無口で無愛想だろ?そんな伊織も心春ちゃんには心を開いてるみたいだから」 「そう、ですかね?」 「父親の俺が言うんだから嘘じゃないよ」 そんな言葉にほんの少しだけ期待してしまう。 私にだけ見せてくれる一面があること、一緒に暮らしていくことで少しずつ距離が縮まっているのは実感している。
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