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お義母さんは最後まですごく優しい人だ。
ずっとニコニコ微笑んでくれて話しかけやすいし、とても人懐こい人で緊張も解れて話せるようになった。
「心春ちゃん今日は突然悪かったな。いろいろありがとう」
「いえ、本当は私の方が出向くべきだったのにご足労いただく形になってしまってすみませんでした」
「いいんだよそんなことは。これからも伊織のことよろしく頼むよ」
「⋯はい」
(本当の妻なんかじゃないのに、そんな約束を気軽にしていいのかな)
そんな迷いの気持ちが返答を曖昧にさせてしまった。
伊織くんの両親には私の葛藤は伝わっておらず2人は笑顔で手を振って家を出ていく。
私はそんな両親にお辞儀をしてそれを見送った。
扉が閉まるのを確認した私たちは揃ってリビングへ戻ると突然後ろから長い腕で体を抱き寄せられる。
「伊織くん⋯?」
「ごめん⋯急に抱きしめたくなった」
私の胸の前に腕を回す伊織くんに私もそっと触れると、彼は私の首元に顔を埋めた。
密着する部分から伊織くんの体温が伝わってきて自然と心が温かくなりさっきまでの緊張が全てどこかへ飛んでいく。
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