初めてのデート

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9月中旬の日曜日。 私は普段より念入りに髪の毛を整え、メイクにもほんの少し濃いめシャドウを使って気分を上げていた。 以前、伊織くんからデートのお誘いがあったが冬麻や伊織くんの両親の来訪などもあり結局出かけられなかったため、その約束を果たす日が今日になったのだ。 (変じゃないかな⋯?) 洗面所の鏡の前で髪の毛先までしっかり整えメイクを最終確認する。 ここまで私が気合いを入れてしまうのは、契約結婚だというのに伊織くんへの"好き"という感情に気づいてしまったからだ。 少しでも可愛いと思われたい、そんな下心が私の行動に現れていた。 伊織くんが私に対してどんな感情を持っているのかは分からないが、少なくとも嫌われてはないと思う。 じゃなければキスなんてしないと思うし、悪い関係ではないと自負していた。 伊織くんへの気持ちを自覚した途端に全ての行動や表情がかっこよく見えてしまって息が止まりそうになる。 今朝も寝起きで髪に寝癖がついている姿を見て、可愛すぎる、なんて思ったばかりだ。 優しくされたりボディタッチなどで好きになってしまうなんて高校生か、と自分でツッコミを入れたくなる程に私は単純かもしれない。
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