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好きと自覚してからは喋る言葉が全部深い意味を持たせてしまうのではないか、不快に感じるのではないかといちいち考えてしまう。
伊織くんにとってはただの同級生の私にそんなこと言われて嬉しいはずがない。
「私は筋肉とか好きだから鍛えてるのいいと思う」
「腹筋とか割れてると嬉しいか?」
「それは嬉しい。服とかちょっとパツってしてるくらいが好みです」
私としたことが意外と伊織くんが話に乗ってきてくれたため聞かれてもないことをべらべらと話してしまった。
誰が私の好みなんて聞きたいんだ、と心の中でツッコミを入れる。
しかし私の思いとは裏腹に伊織くんは嬉しそうに微笑んでいた。
自分の浮き出る血管を見ながら満足そうに口角を上げており、なんだか気分が良さそうだ。
「心春が好きなら鍛えておいてよかった。これからもキープしようと思う」
小さく微笑むその笑顔ですら破壊力抜群で心臓がバクバクと暴れだした。
整った顔立ちだとは分かっていたけど、その笑顔が私だけに向けられていると思うだけで優越感が溢れ出しにやけ顔が止まらない。
そんな表情を隠すように小さく咳払いをし洗面所を後にした。
リビングに置かれていたカバンを持ち、あとは家を出るだけの状態となった所で伊織くんが私の姿を上から下までじーっと眺める。
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