15935人が本棚に入れています
本棚に追加
その想いは契約結婚の妻として伊織くんの隣にいる私の優越感をどんどん増させる理由となっていた。
他の人に対して無口で無愛想な彼が私にだけ見せてくれる笑顔や優しさを見れる特権をずっと握っていたい。
そんな叶うかどうかも分からない淡い期待を抱いたまま私たちは目的地へと向かう。
私たちが訪れたのはブランドショップや飲食店などが立ち並ぶ施設だ。
この通りは有名なブランドたちが並んでおり、多くの人が出入りするかなり都会的な場所だった。
ジュエリーからアパレルなど幅広く立ち並び、更には複合施設まで構えているためこの辺りに来れば全てを網羅できる。
車を降りた私たちはショップが立ち並ぶ建物の中へと2人で入っていくと、早速すれ違う人たちからの視線が集まった。
コソコソと黄色い声が耳に届くがほとんどが伊織くんの容姿についてのもののようだ。
隣を歩く伊織くんを見上げるとそんなこと一切気にしていないのかいつもの無愛想に見える表情を浮かべていた。
だけど私の視線に気づいた伊織くんが私の方を見ると目を細めて小さく微笑んでくれる。
それがとんでもなく特別なことのように感じた。
伊織くんが言っていた私以外には無愛想だと、そんな言葉を思い出す。
「どうした?」
「伊織くんがかっこいいからすれ違う女の子たちみんな伊織くんを見てる。モテモテだね」
「そうか?全然興味ない」
最初のコメントを投稿しよう!