記憶の中の東雲くん

2/11

6464人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
3月中旬、倒産まであと2週間程になった。 任されていた案件も無事終え、先方に提出を終えた私は最後の仕事もやりきり小さな達成感を感じている。 この会社での仕事も終え、あとはこの会社を去るだけだ。 新卒入社して、5年間働いた会社のため倒産して寂しくないといえば嘘になる。 定時に仕事を終えた私は家とは違う方向へと向かっていた。 今日は高校の同級生で私の親友に会う予定だ。 彼女の希望で焼肉に行くことになっていたため、予約しておいたお店に向かう。 個室タイプのようにそれぞれの席が区切られているのが特徴的なお店で、夜はとても人気なようで満席に近かった。 お店に到着した私はそのまま店員さんに案内されると既に彼女は到着しているようだ。 準備のいい彼女は私と自分の分の生ビールを頼んでくれていた。 「寧々(ねね)ちゃん準備万端だね」 「まあね。心春がもう来るって連絡くれたから頼んじゃった。乾杯しよ」 ジョッキグラスを手にカンっとぶつけ合いグビグビと喉を鳴らしながら流し込む。 仕事終わりのビールはなんて美味しいんだろう。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6464人が本棚に入れています
本棚に追加