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歩いて本社まで向かう道のりはすごく新鮮で、近づくにつれてほんの少しだけ緊張が増す。
一緒に働く人たちと仲良くなれるか、仕事についていけるかいろんな感情が心を駆け巡る。
本社の前に着き、東雲くんにメッセージを入れる。
するとすぐに"俺ももう着く"と返ってきた。
そのメッセージ通り深いグレーのスーツにブラウンの革靴を履いた東雲くんが軽快に私の元に近づいてくる。
ジャケットの下に覗くベストはパツパツで筋肉がしっかりついていることが服の上からでも分かった。
「待たせてごめん」
「ううん、私が初日だから早めに来ちゃっただけだから」
「⋯緊張してるか?」
「うん、してる。でもわくわくもしてるよ」
「それはよかった」
そう言って微笑みかけてくれる彼の笑顔は破壊レベルが高く、一瞬勘違いしてしまいそうになる。
普通に笑いかけてくれただけなのに、まるで私のことが愛おしくてたまらないと言いたげな甘味を帯びている気がした。
さすが大企業なだけありものすごく巨大な会社だった。
15階建てのビル全てが東雲ホールディングスの所有する建物で、この本社には多くの人間が働いている。
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