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電話を切ろうとすると向こうから焦ったようにそれを止める麗華さんの声が聞こえてきた。
大切な時間の邪魔になりたくはなかったが、まだ何か伝えるべき内容があっただろうか。
『私、心春さんに出会えてよかった。東雲さんと結婚しろって話がなきゃ、心春さんに会えなかったと思うと、この話も無駄ではなかったと思えます』
「麗華さん⋯⋯」
『心春さんと出会ってからいろんなことが上手くいっています。背中を押してくれたあなたがいたからです』
「嬉しいです。麗華さんのそんな存在になれて」
『これからケーキと一緒にあのカップでコーヒーを飲もうと思っています』
一緒に出かけた時に大切な人を想って選んだカップを使える時間が作れたようですごく嬉しい。
あのカップを選んでいた麗華さんは本当に幸せそうで見ていて自然と笑顔になれた。
『今度、改めて彼から必ずお礼を言わせてください』
「わざわざありがとうございます」
『お礼を言っても足りないくらいのことをしてくれました』
「そんなことないですよ。最終的に行動したのは麗華さんなんですから」
こうやって麗華さんと次の話ができることはとても嬉しいことだ。
株式会社kisaragiの令嬢で私とはあまり交わるべきじゃない立場かもしれないが、単純に麗華さんという人柄に惹かれたのは事実だった。
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