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(なんで、ここに⋯)
「その手を離せ」
腹の底に響くような声に思わず身体がビクッと震えた。
ここからでも彼が怒っていることが分かる。
「お前たちが触れていい女じゃない」
「⋯興醒めしちゃったね。また今度機会があれば」
2人組の男性はパッと私から腕を離し、足早に去っていく。
その姿をぽかーんと見つめたまま突っ立っていると私の目の前に黒いオーラを放つ彼が立ち止まる。
直接顔を見られない。
絶対怒ってる、私がこんなことをしたことを。
「⋯⋯東雲くん」
「加賀美⋯⋯」
私の名前を口に出した途端、私は大きな身体に一瞬ですっぽり包み込まれてしまった。
何が起こったか分からず、その状況を理解した途端身体中の熱が一気に上がるのが分かる。
鍛え抜かれた大きな東雲くんの身体は私をきつく抱きしめ、痛いほど隙間がなくなるくらい強く抱きしめられた。
人の目も気にせず私の身体を力いっぱい抱きしめるその腕は少しだけ震えているようにも感じる。
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