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(いや、それは無理だな⋯)
私がこんな人間だなんて、高校の同級生に知られたくはない。
久しぶりに会えてこれから友人として関係を構築できるかもしれないのに、その関係を壊してしまいたくない。
「嘘だよ」
ふっと小さく笑った東雲くんは私の顎から手を離すとそのまま頭をポンっと撫でた。
整った顔立ちの彼は口角を少しだけ上げて微笑んでくれるが、私はそんな冷静でいられない。
突然の発言や行動に気持ちがついていかなかった。
私に触れるその指先はとても優しくて壊れ物を扱うような触れ方にドクンドクンと心臓が脈打つ。
「本題に入ろう加賀美」
「本題?」
「加賀美にこれからかかる全てのお金は俺が全部出す」
「へ?何言ってるの?」
「だから1つ、条件がある」
とても冗談を言っているようには見えなくてとてつとなく真剣に私を見つめている。
そもそも東雲くんが冗談なんて言うキャラじゃない。
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