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私の方がお礼を言わなければならないというのになぜ彼がありがとう、というのか。
私がその本当の意味を知るのはもっと先のことになる。
「ならもう一度、契約結婚の内容を確認しよう」
「うん」
「これから加賀美に降りかかる全てのお金は俺が出す。もちろん弟のことも全部。その代わり、加賀美は俺の妻としての役割をお願いしたい」
「うん。炊事洗濯、全て任せてください」
私は恋人でもない高校の同級生の妻になる。
それはお金に目がくらんだただの契約で愛なんてそこにはない。
あるのはお互いの利害の一致のみだ。
この先私にどんな生活が待っているのか想像もつかない。
「家にあるものは全て自由に使ってくれて構わない。炊事洗濯、家事などに必要なものも加賀美のやりやすいように全部準備してくれていいからな」
「うん。ありがとう」
「加賀美に必要なお金は全部俺が支払うから、遠慮せずになんでも言って欲しい。それが結婚の契約だから、申し訳ないとか思わないでくれ」
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