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マンションを出た私は東雲くんについて行き駐車場に着くと、1台の車の前で立ち止まる。
ワインレッド色の背の低いスポーツカーに東雲くんは何も言わずに乗り込んだ。
私もつられるように乗り込むが、初めて乗るスポーツカーに緊張が止まらない。
乗り方はこれで合っているのか、余計なことばかり考えてしまう。
(さすがお金持ち。絶対高いんだろうな⋯)
「これ東雲くんの車?」
「そうだ。女性が乗るのを想定して買ったわけじゃないから乗りにくいだろ」
「初めて乗ったから緊張する」
「そんな緊張することない。これから嫌ってほど何度も乗るんだからな」
そうだ、私はこれから彼と夫婦となる。
何度もこの車にも乗ることになるだろう。
これからも一緒にいるんだと、当たり前のように未来の話をしてくれることがなぜか嬉しい。
私たちを乗せた車は区役所にゆっくりと向かう。
目的地に近づくにつれてドクドクと心臓の脈打つ音が大きくなっていった。
「緊張してるのか?」
「⋯うん。めちゃくちゃ緊張してる」
「そうか。でも俺は⋯楽しみだよ」
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