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「急に呼ばれると、照れちゃうな」
「さすがに夫婦なのに苗字呼びは変だからな」
「じゃあ私も⋯⋯」
確かに夫婦となったのに苗字で呼び合うのはおかしい。
そうなると私は彼のことをなんて呼べば良いだろうか。
「伊織、くん?」
私に名前を呼ばれた東雲くん、いや伊織くんの耳がほんの少しだけ赤くなった気がした。
気のせいだと思うくらいほんの少しの変化のため勘違いかとも一瞬思ったが間違いない。
「実感、湧いたか?」
「んーまだあんまり」
「ならもっと実感湧くことしようか」
不敵に微笑んだ伊織くんは私を再び車に乗せどこかへと走らせる。
友達だって分かってはいるが、無口で無愛想な彼が私に向けてくれる笑顔がほんの少しだけ嬉しい。
目的地は聞いても教えてもらえず、私はどこに行くか分からないままだ。
実感湧くようなことってなんだろうと考えると私は1つしか思い浮かばない。
(いやでもまさかそんなことはいきなり⋯⋯)
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