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私が着いた場所は一生縁のないと思われていた超高級ジュエリーショップだった。
足を踏み入れることすら躊躇われる高級ショップで思わず尻込みしてしまう。
(そりゃ、そうだよね、うん、私が間違ってました)
実感湧くようなこと、と言われてどんなことを想像したか、恥ずかしくて言えない。
不純なことを想像してしまった私が恥ずかしいと思えるくらいここは純粋な場所だ。
「し、東雲くん、ここは⋯」
「伊織、だろ?」
「そうだった⋯伊織くん、ここは⋯?」
「結婚指輪、買わないとな」
(なるほど、確かに必要なものだよね)
左手の薬指に指輪があるのとないのとじゃ全く実感の湧き方が違うだろう。
その指輪があるだけで自分も、人からも結婚していることが伝わりやすい。
だがこの場所は一生無縁と思われていて超高級ジュエリーショップだ。
とても手に届く額のものが置いてあるとは思えない。
「結婚指輪を探してるんですが」
「そうだったのですね、おめでとうございます。それであればこちらでございます」
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