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いつものように出社すると既に尚くんは出社しており、パソコンとにらめっこしていた。
締切にはまだ時間的に余裕があるがそのまま何事となく進まないのがプログラミングのため、巻でやることは私たちのチームでは当たり前になっている。
「おはよ尚くん」
「おはようございます」
チラッと私の顔を確認した尚くんの視線は自然と私の指に向けられた。
間違いなく彼の視界に私の薬指に輝く指輪が入ったはずだが、彼は何も言ってこない。
尚くんは必要以上に踏み込んでこない所が私は好きだ。
心地よい距離感を保ってくれるため、私も自然体でいられる。
「昨日もゲームしてた?」
「もちろんです。心春さんは?」
「ちょっとバタバタしててログインできてないんだよね。でも今日はできそう」
「今日ログインすると結構いいアイテムもらえますよ」
「え、そうなんだ。ありがとう今日は絶対やる」
何気ない会話が私を日常に戻してくれる。
伊織くんと過ごす時間はなんだか夢のような感覚で少し現実離れしているようにも感じた。
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