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「そんな顔しないで心春ちゃん。めでたいことでしょ?」
「うん⋯⋯そうだね」
「どんな理由があるかは知らないけど、伊織はめちゃくちゃいいやつだから。そんなあいつが結婚を選択するってことは、あいつなりに心春ちゃんを幸せにしてくれる覚悟があるってことだからさ」
伊織くんの結婚の目的は女避けやお見合い避けとは言っていたけど、もしかしたらそれは本当の理由ではないのかもしれない。
確かに伊織くんはそんなことに誰かを利用するような人かと聞かれると肯定しにくい。
それに高校の時からずっと知ってる翔くんがそう言っているのも信ぴょう性が高く感じる。
彼はどうして私にあんなバカげたことを提案してくれたのだろうか。
「高校時代から伊織のこと知ってる俺の言葉、ちょっとだけ信じてみて」
「うん⋯ありがとう」
結婚のプチ報告は意外と穏やかに済んだ。
だけど私が抱える秘密はとても大きくて、いずれ寧々ちゃんにも言わなければならない。
それがほんの少しだけの罪悪感となるものの、翔くんの言葉で少し救われた。
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