第2話 希と再会

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第2話 希と再会

 ○✖️病院に着くと案内されたのは薄暗い廊下だった。  廊下の突き当たりにドアがあり、その前に多くの人がいる。夫婦が抱き合って泣いていたり、遠くを見つめている父兄、涙を流し続けているお母さん達も。  その中にのんたんのお母さんがいた。  まっすぐ前を見つめ無表情だった。のんたんが意識を失っていた時もこんな感じだった。  私はお母さんに小声でのんたんのお母さんと伝えた。  お母さんはのんたんのお母さんの前に行き 「この度は・・」 のんたんお母さんは首を振った。  突き当たりの扉には『霊安室』とプレートが貼り付けられている。  重苦しい空気の中、私は祈り続けた。 『のんたん。何かの間違いだよね。こんな薄暗い廊下ではなく、清潔で明るい病室で「杏子お見舞いに来てくれたの。ありがとう」とにっこりして、私を迎えてくれるんだよね。神様、お願いです。のんたんをお救い下さい。お願いします。お願いします』  結果はわかっている。わかっているけど信じたくなかった。  暫くすると、エレベーターの扉が開き、「カラカラ」とストレッチャーのタイヤが鳴る音が聞こえて来た。  ストレッチャーと言えば、看護師や救急隊員が「バイタルは・・・」とか言ってものすごい勢いで処置室に搬送する映像をテレビで見かける。  それとは大きく異なっていた。  ゆっくりゆっくりと誰も話さず、「カラカラ」と言う音だけが鳴り響いている。  ストレッチャーが私達の前を通り過ぎて、次々と霊安室に入って行く。  私は搬送されてくるストレッチャーを目で追っていた。  「のんたん」 再び祈り始めた。  不謹慎だが、 合格発表の日、体育館の壁に張り出されていた模造紙の前でも祈っていた。 『友達ができますように』 『私の隣で同じように祈っていたよね。のんたん』 のんたんは何をお祈りしていたのだろう。か。 「私は嬉しかったよ。祈ったそばから友達ができたんだから。ねえ、のんたん。私の友達第一号だよ。のんたん・・・」  涙が頬を伝い流れて行く。鼻を啜ったが、涙は止めどもなく流れる。鼻を啜るのもやめてしまった。 『お母さん達も貰い泣きかな』 あちこちから啜り泣く声が聞こえる。   最後のストレッチャーが搬送された。 遺体を包んでいるものが赤く染まっているように思えた。  暫くして、父兄達が案内された。  普通は父兄や親戚とか身近な人が来る場所だ。この場に残されたのは、私とお母さんだけだった。  更に暫くすると霊安室のドアが開き、のんたんのお母さんが私達の所に来た。  涙と鼻でぐしゃぐしゃになっている顔で、のんたんのお母さんを見上げると 「杏子ちゃん、希と会ってもらえるかしら」 私は頷き後をついて行く。  のんたんは最後に運ばれたストレッチャーに乗せられ、顔の部分だけ見えていた。 「ごめんなさい。胸から下はお見せできる状態からではないから」 赤く染まっている部分だろう。普通の状態と違っているような、体の盛り上がりが無いような気がした。  私はのんたんのお母さんを見つめ、彼女が頷くと跪きのんたんの顔に触れた。冷たく感じると思ったが、暖かいような感触だった。いつもと変わらず透き通るような肌だ。目を閉じているが美しい。  キスをしたくなったが我慢した。  のんたんのお母さんに肩を軽く叩かれて、もう時間とのこと、良かったらお兄ちゃんとも合わせて欲しいとの事。  ただし、霊安室にいられる時間はあまり無いそうだ。  私はお兄ちゃんを探す事になった。
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