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更に二週間後。
人形の帽子の先の糸は、3センチ以上は伸びていた。
折れることなくピンと張った状態で。
俺は瑠璃から逃げるように外出した。
遠くの有名な廃墟に出向いてカメラを回し続ける。
どんな時間帯でも、どんな崩れた場所でも、自宅よりマシだった。
本当の怖いことなんて、起きなかったからだ。
やがて帰宅する度にカツカツと鳴るようになった。
まるで『おかえりなさい』と、言っているように。
最初は叫んだり、心臓の鼓動が早くなっていたが、次第に慣れた。
だけど明確にわかる帽子の伸び具合いに目を背けたくて......。
人形はクローゼットに締まった。
「はーい、どうもー『快人の怪と遭遇』始めまーす」
配信では廃墟に出かけることを中心にやっていった。
遠出をする途中で、オカルトマニアに出会ったことが話題へと
つながっていった。
彼を通じて心霊系の配信では有名な相手を紹介してもらえたり
他の配信者とのオフ会に参加できたりもした。
ガチで霊感のある人は、俺の体験よりも恐ろしいものだった。
「この世は未知だらけだよ」
心霊体験の多い配信者に、そう言われた。
俺も、それを実感している。
こうして短期間で様々な人たちと交流できて。
人形のことは、なんとなく躊躇して話せなかったけど、気は紛れた。
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