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「快人くん、喋りの間の開け方とか、コメントの拾い方とか、
配信自体は上手いよね。聞き取りやすい声質なのも特してる。
でも爪が甘いんだよなあ、怖さを追求してない」
配信者として出会った同年代の男性と居酒屋で飲んだら、言われた。
「内容だけダメっすか~。まあ、仕事柄で身に着いた感じ?
広告会社に勤めてたんで、コミュニケーション能力は学んだかな。
CM撮影の手伝いとかもしてたんで、自然と慣れていって、
そんで、退職してから配信を思いついたっす」
初めて......誰かに自身のことを話せた。
「退職?」
「はい、ブラックでね、自分が壊れていくのがわかった。
何もかも恐ろしくなって、逃げました」
俺は、逃げてばかりだ。
いまは人形から逃げている。
「それはね、生きる為の防衛反応だよ、間違ってない。
そっか、心霊やオカルトより、人のほうが怖い系か。
それなら、僕らみたいなマニアックな配信にならないよね」
酔いが回って、ビールのジョッキがぐらついた。
食べ残した枝豆へと、伸ばす手さえも揺れていた。
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