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VI
「婚活アプリを始める?」
「そうよ」
なりふり構ってはいられない。
私は今度こそ、結婚して人並みの幸せを手に入れるのだ。
私は家に帰るなりタクミを正座させた。
「私は絶対に幸せになる。だから、約束の三日経ったしあんたは出て行って」
「いやいや、オネーサン。恋愛の素人でしょう? 俺、自信あるからサポーターとして、置いとこ? 男の気持ちは男の方がわかるし、さ?」
「信じられないわ」
タクミは”まぁ、見てて”と言うと料理写真を撮り出す。今日のご飯はとうもろこしの炊き込みご飯に豚の生姜焼きだったらしい。
「家事スキルをどう見せるか、男が欲しい女像は俺ならわかるッ!」
*
結論から言うと、タクミのプロデュースは大成功だった。料理が上手で家事がうまい。一周回って家庭的なアピールの方が反応が良かった。何より、看護師という職業が日常に癒しを求める人々にマッチしたらしい。
(馬鹿みたい。私、癒し系の性格してないのに)
これでいい。これで良いのだ。
私は世紀の大恋愛も譲れない価値観もない。
結婚は、ステータスだ。
(愛されたいとか、思わない!)
元カレの姿がチラつくのは、きっと気のせいだと思いながら。
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