VII

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 そうこうしている内に、アパートのすぐ近くまで着いてしまった。暗がりの中、街灯が怪しく私達を照らす。 「あの、本当にここで良いので」 「部屋まで送るから。ほら、すぐなら逆に大丈夫でしょ?」 (何が逆にだ。......気持ち悪い)  口調は心配しているのに、なんとなく強引さを感じる。部屋をなんとしてでも知りたい、みたいな。 (ここまでね) 「あの! 帰ってください」 「は? なんで怒ったの?」 「いや、怒ったとかそういうのじゃないんで。あの、帰らないと警察呼びますよ」  可能な限り冷静なトーンで告げると、男は顔を真っ赤にする。 「はぁっ? こっちは心配して送ってるのに? これだから女様は」 「はぁ......っ?」 「良いから部屋ぐらい送らせろよ。デートの最後に部屋まで送る。別に取って食う訳じゃないのに自意識過剰なんだから」
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