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VIII
「な、なんなんだお前!! 彼氏か!? こんなチャラい彼氏が居るのに婚活アプリで俺を騙したのか!?」
「チッスチッス。ネーチャンが世話になってます。え? 送り狼すか? 俺、今ネーチャンの家に居候してるんで、そういうの。フッ。やめてもらっていっスカ?」
「な、なにーー!?」
流石はヒモ。死ぬほど適当なセリフを吐くのが得意らしい。私は震えがおさまった手を、強く握り返した。
「私、弟と帰るので。さようなら」
「お、おい友梨ーー!」
「名前で呼ばないでもらえます? もう次とかないんで」
後ろを向いて家と反対方向に歩き出す。家を特定されてストーキングされないようにしたい私の意図を汲んでか、タクミも歩幅を合わせてくれる。
「ネーチャン、今日俺部屋の掃除したー!」
「偉い偉い」
「あ、ご褒美にスイーツ買っていい? トルコ風アイスが良い!」
他愛もない話をしながら夜道を歩く。
(あ、流れ星だ)
見上げた空が、澄んでいた。
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