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IX
「また新しい相手からやり直し、か」
婚活アプリの悪いところは、相手との関係が進んだ段階でリセットするとまた一から探し始めるのが億劫になるところだ。今回は時間を無駄にした。
あの後、1時間の回り道をしてタクミと部屋に帰った。
ソファにだらしなく寝転がると、お風呂上がりのタクミが上から覗き込んできた。
「もうやめたら？」
「何を馬鹿なことを」
呆れた。私がどんなに婚活に力を入れているかヒモならきちんと理解しているはずなのに。
「結婚や恋愛は人生をひっくり返すジョーカーになるかもしれない。でも、ならない人の方が圧倒的に多いんだ。だから、縋り付く対象にするのはやめた方が幸せへの近道だと思う」
喉の奥がピリリとした。
「......なるわよ」
「え？」
私はタクミの褐色に焼けた首を掴む。
「なるわよ！ ならなかったら、私の人生はいつまで経っても負け犬のまま！ 人生の負けを取り返せないなら、生きている価値なんてない！」
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