プロローグ

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プロローグ

 一度交わった直線は、すれ違えばその先をいくら伸ばしても交わることはない。 「別れよう」  3年間の交際、同棲を経た彼氏に捨てられた。  愛のない結婚は土台無理な話なのだろうか。  私達の間に恋はあったかもしれないけれど、愛がなかったのは知っている。だって、彼の緩やかな失恋につけ込んで彼女の座に収まったのは全部私の策なのだから。  黒い長かった髪をショートまで切った。  伸ばしていたのは彼が好きだと言っていたから。  3年ぶりに家を借りた。  同棲していた部屋から撤収した荷物はそう多くない。心の中ではいつかそんな日が来るんじゃないかって思っていたから。泣いたりはしなかった。  空は鈍色。  道端でのびている若い男が居た。よく日焼けしてるチャラい金髪の男。30代の私からしたら幼くて、子犬みたい。 (暢気だわ)  潰れているし、財布からはお金を抜かれた跡すらある。このままだと雨が降って風邪をひいてしまうだろう。 「......。」 *  男に声をかけると意識が朦朧としていたけれど、肩を貸すと思ったよりもスムーズに動いてもらうことが出来た。  エレベーターで五階のボタンを押す。  ピンク色のシーツが敷いてあるベッドに寝かせた。 (有り得ない。なんで私、男を拾ったの)
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