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山小屋に近づくと、非常に年数が経っている建物だという事がわかった。
昔は休憩所か何かに使われていたのだろうか。
ギシッ…ギシッ…ギシ…。
周囲にも内部にも明かりが灯っておらず、人の気配を感じない。
扉へ続く階段も抜けそうなくらい木が古くなっている。
ギ…ギギギ…ギ…。
あ、開いた。
開きにくい扉ではあったが、鍵はかかっていなかった。
中に不審者や熊でもいない限り、とりあえず部屋の中で寒さを凌ごうと考える。
「誰か…いますか?」
手袋を外し、携帯電話のライトを点け、内部を照らそうと部屋へ向ける。
「こんばんは~」
と、目の前に派手なスキーウェアを着た髭の濃いオジサンが立っていた。
「きゃああああああああっ!」
……きゃああああああああっ……
…………きゃぁぁぁぁ……ぁぁぁ…………
突然現れたオジサンに驚き、叫んではひっくり返り、勢いよく尻もちをついた。
「ごめん、ごめん。驚かせてしまったね。キミも遭難したのかね」
扉の向こうのオジサンは笑顔で迎えてくれた。
「は、はい」
私は左足が痛い上にスキーブーツを履いたままだったので、手間取りながら立ち上がる。
「嫌だねぇ、そこは『そうなんですよ』と答えてくれないと」
「は?」
この状況でのその発言に驚き、オジサンの顔を見上げた。
「なーーーーんちゃって」と笑顔のオジサン。
「入りなさい。キミは27人目だよ」
「えぇぇっ!?」
私の他に、今日26人も遭難してここに集まったってこと!?
そんな馬鹿な、と思って部屋に飛び込むと、携帯電話のライトに照らされこちらを向いた沢山の顔がぼんやり浮かび上がった。
「ひっ……!」
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