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「次は私が歌うわ！百恵ちゃんいきます！曲は『いい日旅立ち』」と多香子さん。
しっとりとした声で歌いだす。
曲に合わせてか、皆の手拍子が控えめになった。
あれ、多香子さん……泣いている？
１番のサビを過ぎたあたりから、多香子さんの声が時々上ずる。
それに伴い、周りの人達からすすり泣く声が聞こえ始めた。
きっと涙を流しているのだろう多香子さんは、３回目のサビも見事に歌い切った。
「……そうね、待っていてくれている人がいるのかな」
歌詞になぞってか、そう多香子さんが呟く。
「そうですね。皆の帰りをご家族は心待ちにしていますね」と私。
私もきっと、友人が血相を変えて探そうとしてくれているに違いない。
「よし、じゃあ次俺が歌うぞ！水戸黄門様の曲だ！」と年配の男性の声。
え？ここでその曲？
私は『水戸黄門』のドラマを観たことが無かったので、曲のさわりしか知らなかったけど、意外に深良い歌詞で驚いた。
「初めてまともに聴きました！良い歌ですね」
「あ、あぁ。ドラマも歌も、良い番組だよ。……また観てぇなぁ……」
カァーーーッと外でカラスが鳴いた。
夜明けが、近い。
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