37人が本棚に入れています
本棚に追加
ヤバい、どこに行ったらいいのかわからない。
見渡す限り、雪、雪、雪。
辺りはもう暗くなっているが、雪が発光しているかのように僅かに明るい。
風に雪が混じっている。吹雪になったら最悪だ。
痛む左足。
激痛、というわけでは無いので折れてはいないと思うけど……。
私、柳河涼奈は大学の友人と一緒に一泊のスキー旅行に来ていた。
友人が運転するワンボックスカーでスキー場まで来たが、途中渋滞で到着が予定より大幅に遅くなった。
そのため夕食後、誘われるままナイトスキーに繰り出した。
身の丈に合わない上級者コースでのコースアウト。
急な斜面を転がり落ち、落下が終わった頃に気が抜けて意識を失っていたらしい。
腕時計は午後11時を指していた。
とりあえず私は生きている。
左足以外痛むところもなく、運が良かったと思おう。
ストック1本を残して、他のスキーの用具は落下中にどこかで手放してしまったらしい。
私はウエストポーチから携帯電話を取り出し、友人に連絡を取ろうとする。
ーーー何故に圏外。
じっとしているのが得策か。
いや、吹雪になったら確実に死ぬ。
どこか、風を避けられる場所を探さないと……。
携帯電話のライトで辺りを照らすが、手元が光る程度で全く周りの状況が把握できない。
バッテリー切れを懸念して、私は携帯電話をウエストポーチに仕舞う。
確実にポーチに収まっていることを確認して、雪の中を歩き出した。
ザク……ザク……ザク……。
痛む足を庇いながら、ストックで雪を刺しながらゆっくり歩く。
ほんの少し先に、暗闇から突如山小屋が現れた。
た、助かった……!
最初のコメントを投稿しよう!