山小屋

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 ヤバい、どこに行ったらいいのかわからない。  見渡す限り、雪、雪、雪。  辺りはもう暗くなっているが、雪が発光しているかのように僅かに明るい。  風に雪が混じっている。吹雪になったら最悪だ。  痛む左足。  激痛、というわけでは無いので折れてはいないと思うけど……。  私、柳河涼奈(やながわすずな)は大学の友人と一緒に一泊のスキー旅行に来ていた。  友人が運転するワンボックスカーでスキー場まで来たが、途中渋滞で到着が予定より大幅に遅くなった。  そのため夕食後、誘われるままナイトスキーに繰り出した。  身の丈に合わない上級者コースでのコースアウト。  急な斜面を転がり落ち、落下が終わった頃に気が抜けて意識を失っていたらしい。  腕時計は午後11時を指していた。  とりあえず私は生きている。  左足以外痛むところもなく、運が良かったと思おう。  ストック1本を残して、他のスキーの用具は落下中にどこかで手放してしまったらしい。  私はウエストポーチから携帯電話を取り出し、友人に連絡を取ろうとする。  ーーー何故に圏外。  じっとしているのが得策か。  いや、吹雪になったら確実に死ぬ。  どこか、風を避けられる場所を探さないと……。  携帯電話のライトで辺りを照らすが、手元が光る程度で全く周りの状況が把握できない。  バッテリー切れを懸念して、私は携帯電話をウエストポーチに仕舞う。  確実にポーチに収まっていることを確認して、雪の中を歩き出した。  ザク……ザク……ザク……。  痛む足を庇いながら、ストックで雪を刺しながらゆっくり歩く。  ほんの少し先に、暗闇から突如山小屋が現れた。  た、助かった……!
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