忘却の彼方へ

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 ある日、私は故郷の地を歩いていた。懐かしい、ただその感情だけが心を満たす。ここに帰ってきたのは何年振りだろうか。久しい風景に年甲斐もなく心が踊るのを抑えきれないでいる。  皆は元気だろうか、と当時の記憶を回想して物思いに耽る。  私は昔、背が小さかった。髪の毛も短く、活発な少年というのが衆目の一致するところだった。回りの友達と比較しても頭一個小さく、元気で、その頃はよくそれでからかわれたものである。  初恋の人もそんな感じで私をからかってきたが、それも懐かしい思い出だ。  いつの間にか、私は当時の姿そのままになっていた。  私は走り回っていた。大好きな人達と一緒になって。 「どうしたの?」と心配そうに声をかけられ、ハッとなって、意識が元に戻る。「なんでもない」と私は返す。  気付けば背丈は元の通りに戻り、髪の毛も同じ様に腰まで伸びていた。  隣には大好きな人がいる。そして共に歩いている。  私の寿命はもう長くないかもしれない。でも隣を歩いてくれる人がいてくれたから、ここまで生きてこれた。  もうじき家につく。今までの生活は終わり、これから長い、新しい生活が始まるのだ。 完
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