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「なんだろう、この生き物」
目の前には、白くて丸か楕円に近い形の生き物が何が嬉しいのか、何度もこちらを見ながら跳ねている。
さながら見た目は、餅。あるいはマシュマロ、だろうか。
「いや、私はどっちかって言うと伸びる系の食べ物なら、モッツァレラチーズの方が好み·····」
などと一人しょうもないことを呟きながら、この跳ねる謎の生き物をどうしようか考える。
映画などでよく見かける謎の生き物拾いました。設定では、実はソイツは人類を狙う災厄で·····とか、逆にそれらから護るために産まれたって設定もあっただろうか。
でも、私のような一般市民にはどちらの生き物か判断がつかない。
やはり警察?それとも何か生物を研究している機関?か何かに任せてしまおうか。
悩みながらも手は、モチモチとして伸びる謎の生き物から手が離れない。
モチモチモチモチモチモチ
「·····やっぱり、動物とかの研究所?あ、でもなんか注射とかされたりするのかな」
こんな謎の生物だけど、モチモチしてて可愛い系のものを実験動物にするのも忍びない。·····しかし、私の手にも余る状況。そんなことを考えながらひたすら無心でモチモチと伸ばしていた。
すると、どうやら私の不穏な考えが伝わったらしく、目の前の白い生き物がいきなり、イタリア風のファミリーレストランなんかで見かける白いモッツァレラチーズみたいな質感に変わった。
え、質感って変えられるもんなの?
「あ、さっきは餅に近い質感で弾力弱かったけど、今度は伸びにくいけど弾力強い」
モッモッモッ
「けど、この子。何食べんだろ。うちで飼える感じなのかな」
確か動物の種類によっては届出とかいるよな。あと、ペット可物件だっけ?
私が飼う方向で悩み出したのを察したらしい。今度は、自分の飼いやすさをアピールしているようだ。
「え?なになに?自分はモチモチしたものが好き?何それ、共喰い?·····お手洗いは、ちゃんとします?」
疑問形ばかりだけど仕方ない。目の前の生き物が必死にノンバーバルコミュニケーション·····要はジェスチャーで、食べられるものや手入れ方法を説明してくるのだ。こちらも一生懸命解読せねばならない。
「うーん、ま、誰かに飼われてたとかどっかから逃げてきたならそのうち迎えが来るか。よし、ひとまず1週間様子を見てやろう!」
ということで、白い生き物·····改め、ビーノを飼うことに決めた。あ、ビーノって言うのは伸びるを伸びからノービじゃ可愛くないから反対にしてみた。
「じゃ、今日からよろしくね。ビーノ」
こんな伸びる生き物どうやって面倒見ればいいのか分からないけど、ビーノが主張してくれそうなので、どうにかなるだろう。
(ひとまずバレずに潜入成功)
僕は異界から送られてきた魔法使いだ。自分の世界で遊びすぎて、神々から異なる世界で『真の愛』とやらを勉強するまで帰ってくるな。などと言われてここへ来た。
目の前の女性は『真の愛』を知る候補らしい。が、こんな伸びる魔法がかかったよく分からない生物の姿で果たして目的が達せられるのか。不安しかないが、早く帰って研究中だった魔法を完成させたい。
お互いに不安と楽観が同居する生活が始まるが、果たして『真の愛』とは何なのか。ちゃんと勉強できるのか。
それは、神のみぞ知る·····だ。
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