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/ 「ただいまマリア。食料獲ってきたよ」 「おかえりレオくん。……わぁ、大きな猪! なんか、懐かしいなぁ。あの時の猪だったりして」  帰りを告げると、マリアが玄関まで出迎えに来てくれた。何のつかえもなく滑らかに動く彼女の右足を見ながら、レオはフッと頬を緩める。  ソルゲ国とスピカ国の戦争に終止符が打たれて早一年。  レオは相変わらずマリアと二人、この森で暮らし続けている。  前の家は先の戦闘で壊れてしまったため路頭に迷うかと思われたが、スピカ国からの厚意で新しい家を建ててもらえるという話になり、二人は迷わず元の場所を新生活の地に選んだ。  あの日。ルーカスの雷の歌で亡くなったかと思われたマリアだったが、数分後何事もなかったかのように目を覚ました。  他の倒れたスピカ兵たちも同様だ。そしてその奇跡の生還がレオの歌によるものだということは、状況的に明らかだった。  その日まで、歌は戦いのための武器でしかなく、傷を回復させる効果があるだなんて誰も思ってもみなかった。  レオの歌が歌の新たな可能性、あるいは、本来持っていた力を示したのだ。  そしてもう一つ。  レオの歌は聴いていた人の心までも変えたらしい。ソルゲとスピカの和平交渉時、ソルゲ側の先頭に立って指揮を取ったのはなんとあのルーカスだという。 「私思ったんだけどね、」  早速キッチンで猪を捌きながら、マリアが言う。
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