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「歌っていうのはきっと、心を写す鏡なんだよ」 「心を写す鏡?」 「うん。あの時……私が死にそうな時ね? レオくんの歌から、レオくんの心がぶわぁーって伝わってきたんだ。死なないでー、大好きだよー、って。  そして気付いたら、私はレオくんのところに帰って来てた」 「あぁ、うん」  レオは照れて顔を逸らす。  その通りだった。レオはあの時、自分のマリアに対する想いを全て込めて歌った。大好きだ。ずっと一緒にいたい、と。  それが理由で彼女の魂が帰って来れたのだとしたら、レオと会ってから彼女の足が快方に向かっていたのも、今思えばそういうことだったのかもしれない。 「『歌』は心そのもので、『歌う』っていう行為は、その心を相手に伝えることなんだ。  だとしたら辻褄が合うでしょ? レオくんの歌魔法が弱かったのは、ただレオくんが誰より優しい人だったから、攻撃用の魔法が上手く扱えなかっただけ。ルーカスさんが心を入れ替えたのは、レオくんの優しい心が伝わったから。  ね? 歌は心。だから、音痴とかそんなのは関係ないんだよ」 「……そっか」  そうであってほしいな、とレオは思った。  歌は心。そうであれば、今後歌による戦争はなくなっていくのかもしれない。  だって、人間というのは本来優しい生き物のはずだから。  今はまだ難しくても、いつか、歌が世界を変えてくれたら。 「あっ、レオくーん。お肉焼きたいんだけど、火おこし機の調子が悪いの。火、お願いしてもいい?」  大好きな人の呼ぶ声がする。レオは得難い幸せの音色を噛み締めながら、そこに自分の調子はずれなメロディーを乗せて返した。 「炎よ 闇夜に輝く真紅の調よ 我らのささやかなる生活を照らしたまえ ルララルラ」
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