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 一瞬の出来事だった。ルーカスが歌い終えた瞬間、幾筋もの稲妻と轟音が鉛色の空から降り注いだ。  あまりの眩しさに目を瞑ったレオ。しばらくして目を開けると、あたり一面真っ黒に焦げ、その上にスピカ兵たち全員が無惨に転がっていた。  そして、もう一人。 「マ、マリア……?」  さっきまで隣に立って居たはずのマリアが、ぷすぷすと煙を上げながら地に伏している。  焼けただれたその身体をゆっくりと抱き上げると、ぬるりとした手の感触と、血の匂いが鼻をついた。 「マリア? マリア! マリア!!」  レオは必死に彼女の名前を呼び続けた。だけど、何度呼んでも返事がない。呼んで、無視されて、呼んで、無視されて、呼んで……その声にはだんだんと涙の色が混じっていく。  フッ、と堪え切れず漏れたような笑い声が聞こえた。 「ルーカス!!」 「なんだい、レオ」 「なんで彼女まで攻撃した!?」 「おや、彼女は軍人じゃなかったのかい? これは大変気の毒なことをした」  嘘だ。ルーカスは、こうすることでレオが一番苦しむと知っていたに違いない。レオを苦しめるためだけにマリアを攻撃したのだ。  形容し難いほどに惨たらしい憤怒の情が湧き上がる。だけどレオがどれだけ怒ったところで、レオの魔力ではルーカスに傷一つ付けられないだろう。  こんなにも許せないのに、こんなにも苦しいのに……行き場のない激情に苛まれながら、奥歯をギリギリと食いしばることしかできない。  なんで……なんで僕は、こんなにも無力なんだ。 「……歌、って……」  腕の中で今にも消えそうな声がした。レオはハッとして、その声に耳をすませた。 「レオ、くん……歌って……最、後に……もう一度……あなたの歌、を……聞きたい……」
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