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だが、その近さと馴れ馴れしさに、ソフィは思わず距離を取っていた。
「あなたの軽薄さは受け付けないわね…。
そもそも、どうしてそこまでしてくれるの?
言っとくけれど、見返りを求めているのなら、何も返せないわよ。
元男爵家と言っても、町長一家に全て奪われてしまったもの。」
ラオーネは目を瞬かせた。
「んー、そうだなぁ。…あ、恩返し!キミにオレは命を助けられたでしょ?キミに恩返しをしたかったから。それじゃダメ?」
まるで、取って付けたような言い方だった。
だが、何かが目当てなわけでもないようで、ソフィは余計に混乱した。
「あなたは胡散臭いけれど、確かに私もここに居たいわけでもない…。
あなたについて行って王国に行けば、仕事が貰えるかもしれない。…わかった。
ラオーネ、あなたについていくわ。」
ラオーネがパッと表情を明るくさせた。
「本当!?えっへへ~…嬉しいなぁ。
ソフィ、オレはキミの為ならなんでもしてあげる。」
「え…?唐突に何…?薄気味悪いわ。」
「え~ひどーい。でも嬉しいから良いや。」
急にラオーネの距離感がおかしくなって、ソフィは困惑していた。
しかしラオーネはどこまでも純粋に楽しそうだった。
企んでいる様子でもない。
意味がわからなかった。
与えられた使用人という役目もこなせず、投げ捨てるなんて駄目な自分だ。
ソフィはラオーネと共に屋敷を飛び出していた。
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