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「…昔から、ソフィはお人好しだなぁ。
これまで通り、ラオーネで良いよ。
あの日、フィデリスは死んだから。」
改めてそれを伝えられると、少しだけ悲しくなる。フィデリスは初恋だったから。
ラオーネを見ていると今もフィデリスとして元気に過ごしているように見えるのに、かつてにはなかった薄暗いモノを、きっと胸に秘めている。
「それじゃあ、ラオーネ、行くならさっさと行くわよ。」
「ソフィがついてくるって言うなら、オレは止めないけどね~。」
ヘラヘラと笑うラオーネを眺めていた直後だった。
ラオーネがソフィの腕を引いて、顔を覗き込んでくる。
「な、なによ…?」
猫のような瞳がソフィを捉え、影が射して、緑の双眸は煌めいて見えた。
「それと、居なくなるにしても、もう勝手に居なくならないで…?
…ソフィに、何かあったらオレは…」
ソフィを見つめる眼差しは優しい。
同時に、どことなく、不安げな色が覗く。
見たことない表情だ。
囁き混じりに聞こえてくる声音は、憂いと甘さが滲んでいた。
ソフィは思わず、ラオーネの胸を押していた。
「ほ、ほら…!行くわよ!」
「は~い。」
ラオーネの表情がいつも通りに戻って、ソフィは安堵していた。
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