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顔を覗き込んでくるラオーネを、ソフィは剥がしていた。
「教えても一部屋にはならなかったわ!」
「ぶーぶー」
相手していたらキリがないと、ソフィはラオーネをとっとと捨てて、部屋に向かっていたのだった。
「あッ、ソフィ、同じ部屋じゃなくて良いから置いていかないで!」
ラオーネは猫というより、犬を拾った感覚に近いかもしれない。
拾われたのはソフィの方かもしれないが。
それから宿屋に泊まる事、数日。
ラオーネの事だからソフィの部屋にでも来て邪魔でもしてくるかと思っていたが、特にそういった事はなく、拍子抜けしていた。
それならその方が良いのだが、食事の時にラオーネの部屋を訪れるが、居ない事が多数。
連日、どこかに出掛けているようだった。
ソフィも数日職探しをしていたが、さすがにラオーネの留守の頻度が多いと、ソフィと言えど、気になってくる。
本人に直接理由を聞いたが、『秘密~』とはぐらかされたので、ソフィはその日、ラオーネの事を尾行していた。
冷静に考えるが、ソフィがラオーネを尾行する理由が我ながらよくわからなかった。
ソフィとラオーネ。同じ王国に目的がある同士で行動をしているが、だったら教えてくれても良いと思う。
ビジネスライクな付き合いならともかく、あれだけラオーネからグイグイ来ておいて、いざ自分の事になったら一切教えてくれないのは、如何なモノなのか。
あちらはソフィの事情を知っているのに。
ラオーネを尾行する事しばらく、城下町の深い所へ行くにつれ、辺りの風景に変化が起きていく。
スラム街のような、治安が良いとは言えない、怪しい道を、ラオーネは猫のようにすいすいと進んでいく。
やがて行き止まりにて足を止め、待機していた者に、ラオーネは目を向ける。
「やっほ~調子はどう?」
「合流して集まってきてはいますが…長、本当にやるつもりですか?」
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