フィデリス

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ラオーネがソフィを見つめ、涙目になった。 同時に、自嘲(じちょう)じみた笑みを(こぼ)した。  「あーあ…そこまで思い出しちゃったんだ…? このままバレないまま、スッキリさよなら出来たらって思ってた、んだけどなぁ…。」  「フィデリス、生きてて良かった。 私も心配だったのよ。 …けれど、どうしてこんな事になっているの?」  顔は夢で見るまで忘れていたが、ずっとフィデリスの事は心配だった。  生きていて良かったと思う反面、まさか闇ギルドを率いる(おさ)になっていたなど、想像つかなかった。  「ソフィには、話しておくよ。 気づいてると思うけど、ラオーネは偽名。 オレの本名はフィデリス・ローゼ・グラディウス。ヌール王国の第六王子なんだ。」  「…王子!?確かにグラディウスは、ヌール王国王家だけが使える姓だけれど…。 でも、まさか王子だったなんて…。」 気品があるとは思っていたが、王家らしからぬ不遇な扱いから、とても王子のようには見えなかった。    「王子と言っても側室…妾の息子だよ。オレの母はかつて、王をも魅了した踊り子だったんだ。」 ラオーネは、当時の事をソフィに語った。  ラオーネの母、エルヴィラは町の踊り子だった。 王国一の華やかさと美しさから、王に見初められた。 エルヴィラは王から強い執着と寵愛(ちょうあい)を受け、フィデリスを生んだ。  同時期、魔王が世界を滅ぼす為、王国を乗っ取ろうと(たくら)んでいた。 王宮内の宰相(さいしょう)達は、魔族と繋がりを持っており、王を意のままに操る為に、傀儡(かいらい)化する計画を立てていた。 王すら魅了するエルヴィラは、宰相(さいしょう)らから協力を持ちかけられたが、それを拒否。 エルヴィラは宰相(さいしょう)らから、暗殺される。  事前にそれを察知していたエルヴィラは、フィデリスをベッドの下に隠し、我が子だけでも逃がそうとした。  フィデリスは母が死ぬのを目にし、やがて王国から追われる身となった。  「それで当時の闇ギルドの(おさ)に拾われてさ。 母を殺し、魔族と繋がりを持っていた宰相(さいしょう)一派を潰したくて、オレは復讐心の為にここまで来たんだ。」
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