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「ああ…他の闇ギルドの奴に奇襲されたんだっけ…。」
ボソリと青年が無表情で呟く。
『闇ギルド』と言う単語の不穏さに、ソフィは眉を潜める。
「…え?」
「ううん~?こっちの話~。
キミ、助けてくれて、ありがとね~。」
青年はパッと表情を変えて、へらへらと笑顔で言った。軽薄そうだ。
「…それは構わないけれど。重症で、何があったの?」
「…オレはワケアリなんだ~。少し休んだら勝手に出ていくよー。」
「そうね。私の聖術でも完治はさせられなかったから、動いたら傷が開くかもしれないし。そうした方が良いわ。」
ワケアリであまり長居でもされて、巻き込まれるのも嫌だった。
「助かるよ~。…けど、なんで家畜小屋?
オレを運ぶのに近いからかと思ったけど、日用品が置かれてるし…。
まさか、ここで寝泊まりしてるわけ?」
ソフィは図星を突かれて、思わず目をそらしていた。
「それは…」
その時、勢いよく扉が叩かれる。
「ソフィ、まだ帰ってないのか!?私の大切なアンナがお前を呼んでいるぞ!!」
ソフィは反射的に立ち上がっていた。
「旦那様、今すぐに行きます!!」
ソフィは青年の事も放置して、慌ただしく小屋から出ていた。
「ありゃ…行っちゃった~。…せっかくだし、のんびりしてよっかなぁ~。」
青年は藁の上に寝転がると、勝手に猫のように眠り出していた。
「ソフィ、あんた、買い物もマトモに出来ないの!?この出来損ない!!」
買ってきた物を投げつけられ、割れていた。
「お嬢様が要求された物は、もう売り切れていたんです!ですから形がよく似ている物を…」
「使用人ごときが、わたくしに逆らうと言うの?」
突き飛ばされて、ソフィは床に叩きつけられる。
見上げるといるのは一人の少女。
美人だが、ソフィを見下ろす眼差しは邪悪に歪んでいた。
彼女はアンナ。
元々は親戚で、歳もソフィとは同じ十八歳。
昔から自分勝手でワガママな要求をしてくるお嬢様だ。
ソフィが押し殺すように、拳を握った時だった。
「アンナや、こちらに来てみなさい。
無能なソフィに変わって、アンナが欲しがっていた物を用意させたぞ。
ちょうど私もアンナに何かないかと、色々と買ってきたところでな。」
部屋に入ってきたのはアンナの父で町長のパトリックだった。
「パパ、本当~!?」
「アンナがあまりにも可哀想だったのでな。
小物を用意するのは難しかったが、アンナもきっと気に入るだろう。」
「さっすがパパね!!」
アンナがソフィに目を向ける。
「これ片付けておきなさいよね。役立たずでもそれくらい、出来るでしょう?」
アンナが部屋を出ていった。
ソフィは思わず力が抜けていた。
どうにかこの場を切り抜けた。
ソフィはアンナに言われた通りにゴミを片付けようとした時、パトリックが冷めた顔をソフィに向ける。
「身寄りがないから仕方なく引き取ってやったが、可愛げもなければ要領も悪い使えん小娘が。
アンナが目をかけたら良い気になりおって…。」
悪い意味で目をかけられているの間違いだ。
「アンナや~お気に入りの物は見つかったかな?」
「どれも素敵ね!わたくしに似合うわ!」
楽しそうな声が聞こえてくる中、ソフィは一人、部屋に残された。
疲れ果てたソフィが小屋に戻ってきて開けた瞬間、思わず固まっていた。
はっきり言って存在すら忘れていた青年が、ソフィを見ていたからだ。
「あ、おかえり~遅かったねー?さっき怒鳴り声が聞こえてきたけど、怒られてたのキミ?散歩してたら聞こえて来ちゃった~。」
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