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青年がへらへらと笑って言う。
「ええ。…さっさと居なくなったかと思ってた。」
「オレー?そうしようと思ったけど、居心地が良かったからねー。
案外、住めば都になるかも?」
「馬鹿にしてるでしょ?」
「あは~。」
ニコニコと笑う瞳を見るが、何を考えているのか、わからなかった。
「重症だったオレが、これだけ体を動かせるほど治ってるってコトは、キミは中級の聖術が使えるんだね。」
「そうね…。」
ソフィは誤魔化すように頷いていた。
「聖術の中級はセンスと知識がいる。どこで学んだのー?」
初級の聖術は子供でも使えるほど日常的に普及している。
威力が大きくなる中級からは、特別な訓練や師から学ぶ事で使えるようになる。
言うべきか悩んだが、この青年は色々と詳しそうだ。誤魔化しが効かないとソフィは思った。
「私は過去に聖学院にいたことがあるから、その時にかじったの。」
「聖学院は庶民が入るには難しくなかった?キミは何者?」
「私はソフィ。元々男爵家だったけど、両親が無くなって身寄りも爵位も失くなって、この町の親戚の家に引き取られた。
そこで使われる毎日だけど、最低限の生活は保証してくれるから。
だからお世話になってるの。」
「それにしても扱いが酷くない?
これなら自由にやれるスラムの方が、まだ生きやすそう。」
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