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ラオーネの声音は優しかった。
「…何を、言っているの?」
宝石のように輝く緑の瞳が、暗闇の中でソフィを捉える。
まるで猫のような瞳は、すっと細められた。
「ソフィ、キミの様子をずっと見てたけど、こんな所にいても辛いだけじゃない?
一家揃って、キミを虐めるクズばっか。」
「そう…だけれど、私はこの家にお世話になってるから。他に居場所もないし…。」
「お世話になってるかなぁ?一家の方がソフィにお世話されてるの間違いじゃない?
こんな所抜け出してさ、オレと一緒に来ない?王国に行く途中なんだよね~。」
胡散臭い妖しげなこの男とか。
それはそれで怖いとソフィは思った。
「あは、胡散臭いって思われてる?普通にしてるつもりなんだけどなぁ。滲み出ちゃうのかな?それとも匂いでもする?…臭くは、ないと思うんだけど。」
くんくんと自分の匂いを確認するラオーネ。
その行動がおかしくて、ソフィは思わず小さな笑みを溢していた。
「あ、笑った。怒られてる時の顔より、今みたいな方が可愛いよ。せっかくソフィは、綺麗な顔をしてるんだから。」
柔らかい笑顔を溢したラオーネが、ソフィの頬に触れた。
ああ、こんな顔もするのだ。と不意にソフィは思った。どこか、既視感を覚える。
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