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ヌール王国
現在、馬車の移動中だった。
夢の内容に耽っている場合ではなかった。
「近いわよ!」
「えへへ~、ソフィに怒られちゃった。」
その割には笑顔のラオーネ。
相変わらずよくわからない男だった。
「あ、あとどれくらいで王国だっけ…?」
「ん~?そろそろ…いや、噂をすればって奴だね~。見えてきたよぉ。」
馬車から覗くと見える、遠くの王城。
人で溢れた城下町が見えてくる。
ヌール王国に到着したのだ。
かつて世界を滅ぼすとされていた魔王は、三人の英雄によって倒された。
平穏な世界の、平和の象徴のような大国だった。
ソフィがこの国に戻るのは久しぶりの事だ。
「ラオーネは王国に目的があるって言ってたわよね?」
目を向けた時、ラオーネの瞳は輝いていた。
興奮と、何かを企むように、ただ、遠くを見ていた。
「…やりたい事があってね。
ついでに、確認の為に来たんだよ~。」
「やりたい事って?」
「ソフィでも秘密。…でも、長年の夢だったんだ。この為に、色々と計画してきたんだ。」
「そう。また、秘密なのね。」
「拗ねてる?」
ラオーネは、意地が悪い笑みを浮かべ、目を細める。
「まさか。そんな風に見えてる?」
「…うん。」
目を向けると、ばちりと合う目をソフィはそらしていた。
ラオーネは酷く楽しげだった。
馬車が到着し、一足先に降りるラオーネ。
ソフィを見上げ、蕩けるように甘く微笑んだ。
「さっ、レディ?お手をどうぞ?
なーんてね~」
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