1/1
前へ
/8ページ
次へ

スノーバードは、それから毎日アンの家の庭にやってきた。 渡り鳥の群れは海に近い草原を拠点にしていたが、群れから一羽離れてわざわざここまで飛んでくるのには、何か訳があるのだろうかとアンはいぶかった。 よほど好物の餌でもあるのか、それとも……。 アンはまた、スノーバードのさえずりが日増しに高まり、頻繫になっていることに気付いた。マーティンの言った「春の歌」を歌っているのだろうか。それはあたかも、春の使者が天から託されたメッセージを器用に歌い上げているといった風だった。 そして、鳥は時折アンの方を向いて歌った。そのため、鳥の黒いつぶらな目とアンの目が合うことがあり、その瞬間、両者の間に通い合うものがあったと、アンはとても信じられないという気持ちながら直感した。 このスノーバードはメスなのだろうかオスなのだろうかと、アンは考えた。 人間と鳥はかけ離れているので、鳥は鳥として認識されその性別にまで思い至らないことが多いが、この時アンがそれに興味を抱いたのは、そのスノーバードに同性として共感めいたものを持ったからだった。 たしかスノーバードのメスはオスより褐色の部分が多いのだったと思い出しつつ、アンはすでにそれがメスだと断定していた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加