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アンは夢想した、渡り鳥の楽園のことを。 そこは鳥だけが行ける世界で、鳥たちのために優しく風が吹き、穏やかに水が流れる。 すべてが、何キロものつらい空の旅を続ける鳥たちを癒す。 旅はまだ続き、それは束の間の休息だが、鳥たちにとっては千金に値する。 天は渡り鳥に長く苦しい旅を毎年続けるという宿命を与えたが、それを埋め合わせるご褒美を忘れなかった。それが渡り鳥の楽園だが、その中で天のご褒美として最も具体的に与えられたのが、manna、神の食物だった。 それは旧約聖書でモーゼに導かれたイスラエルの民が、エジプトを脱出して荒野を彷徨っているときに神が与えた食物だ。 渡り鳥にとって最高の栄養源になる食物であり、疲れを一瞬で忘れさせるほど美味だった。 それはマーティンの話の受け売りだったが、アンにとっては渡り鳥から直に伝えられたことのように真実味があった。 アンは、青く澄んだ瞳に空を映して、鳥への愛を語るマーティンが好きだった。たとえその愛が自分より鳥へより多く向けられるのだとしても。 マーティンは生きていて必ずまた会えると、アンは自らを勇気付けるように言い聞かせた。
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