シング ライク レイン

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 切符を買って、電車に乗った僕は無意識にウェストポーチからヘッドフォンを出して音楽をかけました。  突然流れて来たロックに驚き、思わずヘッドフォンを外しそうになって、その時に触れたタッチセンサーが選んだ曲は大人しいフュージョンでした。  僕は手を下ろして、ドアに寄りかかり、ぼんやりと流れて行く景色を眺めています。川を渡り田園風景を走って、水戸に近づいていくと、少しずつ建物が増えてきました。出かける時に曇っていた空は、今では空一面、厚い雲で覆われてきて、今にも雨が降りそうになっていました。  水戸駅を降りて、ロータリーを抜けたあたりで、空からぽつぽつと雨が降り始めました。いつもは彼女が家まで送ってくれていたから、傘の心配なんてしたことは無かったんだけど、今はそんな事を思い出すことも無く、もくもくと歩いて帰ります。
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