緊張緩和のためにもコースと仲良くなっておこう

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緊張緩和のためにもコースと仲良くなっておこう

 あれだけ歩いていると、もう試験場が庭みたいな感覚になるからおもしろいものです。本番、必要以上に緊張しないためにも、この“庭感覚”ってやつにしておくというのは、花谷にとってよかったみたいです。  実際、本番の試験のときも、ガチゴチにならず、ほどよい緊張感の中、臨むことができました。何せ試験官は制服をまとった現役警察官ですから、まあ、それなりに緊張するのは避けられないでしょう。  だったらせめて、試験場を試験場と思えないくらいになじんだ景色にしておけば、緊張感も半分ぐらいになるんじゃないかと、花谷は考えたわけです。  それにしても、50のおばさんの脳内に、果たしてあの無機質な試験コースがインプットできるものかと、当初は本当に不安で仕方なかったのですが、いや~、何とかなるものですね。人間の記憶力って、何だかすごいなと関心してしまったくらいです。  もっとも、若いときだったら、こんなに通わなくても、すんなりインプットされたとは思うのですが、ハンデを背負っている身としては、回数をこなして帳尻を合わすしかないんですよね。谷村さんが学科に苦戦したという話が、ここでも生きてきました。  何がともあれ、脳内ストリートビューを完成させると、いつでもどこでも試験コースのおさらいができるのが最大のメリットです。寝付きが悪い夜とか、逆に、早く目覚めてしまった朝とか、布団の中で試験場の景色を移動していくという作業をやっていました。  これを繰り返しているうちに、だんだんとどこで合図を出し、どこから進路変更を始めるかとか、この場所は初めから幅寄せしていく場所だとか、ポイントとなるところが自然と思い起こされる状態になりました。
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