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「君は特待生らしいね。成績優秀者は学費の免除がある。ただそれは毎年査定があるんだよ。成績が落ちたら免除は打ち切られるのは知っているよね?」  長谷川が脅しのような言葉をかけてくる。 「だが、僕にまかせとけばいい。悪いようにはしないから。そのかわり、わかってるよね? ギブアンドテイクと行こうじゃないか?」  長谷川が詰め寄ってくるが、身体が思うように動かない。 「な、なにをするつもりなんですか?」 「しぃ。じっとしてて。良い気持ちにしてあげるよ。はじめてのフリかい?くくく。面白いよ。そうこなくっちゃ」  長谷川がベロリと首筋を舐めてきた。ビクっと身体が反応する。 「や、やめてくだ……さい」  嫌なのに。気持ちが悪いと思っているのに。触られた場所が震えておかしくなりそうだ。 「はっ。匂いが濃厚になってきたね。いいねっ。はぁはぁ。楽しもう!」  長谷川が僕の上に馬乗りになって服を脱ぎ始めた。 「ひっ! やだ……は……ハジメ!」 「あん? ……難波のことか? あいつがまとわりついてたせいで君を誘うのが遅れてしまったんだよ。忌々しいやつめ。いっそのこと首の後ろを噛んであげようか? そうすればもう君は僕しか求められなくなる。僕のコレクションのひとつにくわえてあげるよ」  首を噛む? そうだ聞いたことがある。オメガをアルファが嚙む行為。噛まれたオメガは番となり、その相手としか交われなくなるという。だがアルファは違う。何人も番が持てると聞いた。  全身に恐怖が走る。こんなやつが一生に一度の相手なんて。 「嫌だ! 嫌だ! ハジメ! ハジメ! 助けてっ!」   「この変態! 俺のすぐるになにさらしとんじゃあ!」  急に体が軽くなると同時に数発の打撃音が聞こえる。 「ハジメ……?」  重い身体を起こしてみると肩で苦しそうに息をしてるハジメがいた。 「すぐる。だ……大丈夫……か?」 「ハジメ? よかった。怖かったんだ……ハジメ?」  ふう、ふうと息を荒くしたハジメが近づいてくる。いつもと様子が違う。ぶわぁっと、ハジメからいい匂いがあふれ出してくるのがわかる。 「え? なに……」  それにリンクするように自分の身体からも濃厚な匂いが出てる事に気づいた。 「はぁ。やばい……すぐる……俺から……にげろ」 「ハジメ? どうし……?」  言葉とは裏腹にハジメは僕に襲いかかってきた。怖い。でも嬉しい。抱きしめられて唇を強く吸われる。ハジメの舌が僕の口の中を蹂躙する。 「んん……はぁ……」  甘い。甘くて蕩けるような口づけが思考力を奪っていく。なんて気持ちいい。このまま何も考えずに身体を開いてしまいたい……。  しかしすぐに激しい衝撃音がして思考が戻ってきた。ハジメが急に動かなくなり、僕の周りは水浸しで陶器の破片が散らばっていた。 「呆けてないでしっかりせんか! はよ太腿(ふともも)だすんや!」  そこには朝比奈がいた。片手に持った注射型抑制剤を僕の太腿に突き刺している。 「っ……朝比奈さん?……すみません」 「ふぅ。意識が戻ったか? どうなる事かと思ったわ。ハジメはラット状態やし、長谷川は伸びてるし。俺はオメガ用の抑制剤しか持ってへんからな。ハジメには花瓶でおねんねしてもろたわ」  おねんね? ハジメは寝てしまったのか?  残念な気持ちとほっとした気持ちが入り混じる。  「助かりま……し……た……」  どうしたんだろ。身体が重い。ふいに朝比奈の声が遠くなっていった。 「あ! ちょっとまだ寝たらあかんって……おい! 俺一人でこの状況どうするんや」  
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